数字の出所を、読売は「AP通信やCNNテレビなど米主要メディア」、読売を除く4紙は「AP通信の独自集計」としている。この書き方は基本的に米国メディアも同じ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/AP%E9%80%9A%E4%BF%A1
アメリカのメディア各局が伝えるところによると、この数字は米軍の公式発表をもとにしているという。公式発表との違いは8名(公式発表は3992)。その根拠がどこにあるのかを説明した報道や、AP通信の説明書きページが見当たらないのだが、違いに異論を挟む人はざっと見たところ見当たらない。
国防総省
http://www.defenselink.mil/news/ 集計
ロイター通信は、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、マケイン・オバマ・クリントン各大統領候補、ペリノ・ホワイトハウススポークスウーマン、ウィットマン国防総省スポークスマン、ペロシ下院議長の発言をだけを集めた記事を配信しているが、総じて言えば皆真摯に受け止めているといえよう。
http://www.reuters.com/article/middleeastCrisis/idUSN24277913
何より、ペンタゴンのイラク専門ページ「Operation Iraqi Freedom」のトップページに、CNNの4000人死亡の記事タイトルが掲載されている。
http://www.mnf-iraq.com/
http://s03.megalodon.jp/2008-0325-1902-51/www.mnf-iraq.com/
10万人規模~100万人以上と、推計に幅があり議論が巻き起こっているイラク人死亡者数とは大違いだ。
違いの8人を除けば、米軍死亡者は公式発表を疑う余地が小さいように思う。というのも、以下のような過程を経るからだ(どこかに書いていたわけでなく普段ニュースを見ていて思うことで、間違っているかもしれない)。
まず、ペンタゴンがプレス向けの発表と家族への報告をほぼ同時に行う。プレス向けには個人を特定できるような情報は含めない。
↓
メディアは個人が特定できる情報以外の情報を一斉に伝える。ペンタゴンは関連サイトを更新する。
↓
ペンタゴンの担当者が家族の元を訪れお悔やみを申し出る。
↓
プレス向けに個人情報を発表。
↓
メディアや関連サイトがプロフィールや所属部隊などを伝える。
↓
メディアが家族や友人知人、恩師などにインタビュー。葬儀の場所や時間まで詳細に伝える。当然、言うにはばかれるような過去があったとしてもそれには触れず、逆にちょっとしたことでも褒めちぎる。特に地方紙は地元の英雄として紙面を大きくとる。
CNNやUSA Todayは、全死亡者の詳細なプロフィールを載せたページを作っている。
http://www.cnn.com/SPECIALS/2003/iraq/forces/casualties/
http://www.usatoday.com/news/world/iraq/iraq-casualties.htm
4000人は区切りなので、こぞって取り上げられているが、普段でもこのように死亡者は大々的に取りあげられている。そのへんが日本のメディアとは事情が違う。
天涯孤独という米兵は極めて少ないだろう。基地ではインターネットや電話が使えるし、手紙のやり取りもできる。任期は、陸・海・空・海兵隊それぞれ別に決まっており、当初より1回あたりの駐留期間が延びているが、それでも4軍とも最長で1年半以下。2年たっても何の音沙汰もなく帰ってこないなんてありえない。
また、現在行方不明者、あるいはどこかに連れて行かれたことが確かな人が4人いるのだが、彼らの氏名や所属部隊なども公表されている。他にそういう人が沢山いるならば、おそらくメディアがかぎつけてスクープにするだろうが、そういう記事は一見したところ見当たらない。
http://icasualties.org/
というわけで、4000人というこの数字は信頼できるようだ。しかし、一方で、ここには含まれないアウトソーシングで雇ったブラックウォーターなどの傭兵の死亡者がどれくらいに上るのか、容易には分からないのが気がかりだ。
CNNは、国防総省と復員軍人援護局の資料をもとに、1775~1783年の独立戦争(革命)から、2007年11月6日まで、アメリカが関わった主な戦争における米兵の戦死者をグラフにしている。それによると、もっとも犠牲が大きかったのは、南北戦争で、推定50万。次に第二次世界大戦で40万5千、第一次世界大戦の11万6千、ベトナム戦争の5万8千と続く。イラク戦争の米兵の戦死者は歴史的にみると比較的小さいが、テロとの戦いという括りでイラクとアフガニスタンを合わせると、今日現在で、独立戦争、米西戦争、米英戦争(1812年戦争)を上回っている。なお、湾岸戦争は382と際立って少なかった。
CNN:U.S. and Coalition Casualties - Iraq
(U.S. war casualtiesをクリック)
http://www.cnn.com/SPECIALS/2003/iraq/forces/casualties/
年間死亡者数でいうと、ベトナム戦争で4,850、朝鮮戦争で12,300。イラクの場合、過去最高だった昨年が901、2番目に多かった2004年は850。
イラクの米兵死亡者数は決して小さな数字ではない。しかし、遠目で見ると、アメリカ人のほとんどがいてもたってもいられないほど嫌悪する数字というわけではないだろう。なにより、「決定的」に誰もが感じやすい、実害が今のところは乏しい。
Soldiers and analysts alike say the impact of the deaths in Iraq has been largely lost on many Americans who have no personal connection to the war.
"It's still a war that hasn't involved a draft or an increase in taxes," said Jon Alterman, who heads the Middle East program at the Center for Strategic and International Studies in Washington. "This is a war that most Americans continue to feel they don't have to make sacrifices for."
(兵士や専門家は、死のインパクトが、イラク戦争に個人的関係のない人にはなかなか通じないといっている。
「戦争は続いていますが、徴兵や増税がありません」と、戦略国際問題研究所の中東事業部長の、Jon Alterman氏は言う。「この戦争に対して、たいていのアメリカ人が依然として自分たちは犠牲を払う必要がないと思っています」。)
http://ap.google.com/article/
ALeqM5iaMHxJ2ZC7mGW80cLZfYeeFx9LBAD8VEOSKG0
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