包括的検証、サダムとアルカイダの間につながりがないことを見出す(マクラッチー 3/10)
http://news.yahoo.com/s/mcclatchy/20080310/wl_mcclatchy/2875005
【要訳】アメリカのイラク侵攻後、押収された60万ページ以上の公文書を再検証した結果、サダム・フセイン政権はオサマ・ビンラディンのアルカイダとは、いかなる共闘関係もなかったことが明らかになった。
関係者が匿名を条件にマクラッチー紙に語ったことによると、フセイン政権はいくつかのテロリストグループ、とりわけ中東のそれを支援していたが、治安機関は第一にイラク人の敵、すなわちシーア派、クルド人、そのほか政権にとって脅威とみなした相手に対するものだった。アメリカが侵攻する前に、フセインとアルカイダの間で「直接の戦闘上の関係」を示す書類はいっさい見当たらなかった。
ブッシュ大統領と彼のスタッフは、911以降、イラク侵攻を論じる際に、大量破壊兵器保有の疑いとともに、フセイン政権とアルカイダが関係しているという疑惑を利用した。
当時、国防長官だったドナルド・ラムズフェルドは、アメリカは、イスラムテロ組織と世俗的なフセイン政権の協力関係を証明する「bulletproof」(動かしがたい)証拠をもっていると2002年9月に言っている。
また、当時国務長官だったコリン・パウエルは、侵攻を支持する国際的な世論形成を目的に、重要な山場となった2003年2月の国連安保理で行った演説において、フセインとアルカイダの多岐にわたる関係を主張した。このとき彼が例に挙げたもののほとんどが、いまや嘘または情報の誤った解釈に基づくものであったことが分かっている。
昨年7月に至るまで、ブッシュ大統領は、イラクで今起こっている武力衝突とアルカイダをなんとか結びつけようとしていた。「911で我々に攻撃を加えた同じ連中が、いまは多くのイスラム教徒の罪なき男、女、子どもを攻撃している」と言っている。
「Saddam and Terrorism: Emerging Insights from Captured Iraqi Documents」(サダムとテロリズム:押収した公文書から明らかになった実態)と題するこの研究は、基本的に昨年完成していたが、ある諜報機関の職員がいうところの、骨の折れる機密解除の検証作業を受けていた。
調査は、Institute for Defense Analysesが、バージニア州ノーフォークを拠点とする統合戦力軍の求めに応じて実施。このシンクタンクは連邦政府より補助金をもらっている。
統合戦力軍のスポークスマンは報告書が公表されるまでコメントを避けている。執筆者の一人である、Kevin Woodsもしかり。
イラクにおけるアルカイダについては、2008年の大統領選にも影響を与えている。
ジョン・マケイン上院議員は、バラク・オバマ上院議員が、もしアルカイダがイラクに拠点を作っているなら米軍をいくらか駐留させるかもと最近発言したことに対して嘲った。
「私は情報をもっています。アルカイダがイラクにいるという」と、マケインは支持者に言っている。それに対して、オバマは「ジョージ・ブッシュとジョン・マケインが侵攻を決めるまで、イラクにアルカイダのようなものは存在しなかった」と、反論している(事実、イラクのアルカイダは、侵攻の1年後、2004年になるまで姿が見られなかった)。
新しい研究報告書は、ブッシュ大統領のイラク侵攻選択について支持、不支持の両サイドが、互いの論拠の肉付けに利用されることは間違いないと思われる。
フセイン政権は徹底した世俗主義であり、アルカイダのようなイスラム過激主義の集団について懸念していたが、他のアラブ人指導者と同じく、イスラエルに対してテロ活動をするパレスチナのグループに資金援助していた。
国務省が毎年出している、世界のテロ2002---イラク侵攻より前に出されたものの中で一番新しい---によると、フセインは、ガザのイスラム民兵組織ハマス、パレスチナイスラム聖戦機構、そしてシリアをベースにするテロ組織のパレスチナ人民解放戦線総司令部派(PFLP-GC)を支援していた。
また、フセインはパレスチナ人テロリストのAbu Nidalを住まわせていた。もっとも、 Abu Nidalの組織は彼がリビアにいた頃のほうが活発だった。彼は2002年8月にバグダッドで殺害されている。これはフセインが下したと推測されている。
統合戦力軍が2006年3月に出したイラクの公文書の分析にもとづく報告書では、1991年の湾岸戦争後、フセインが自分の敵の暗殺や爆破を目的に、民兵組織、フェダイン・サダム(サダム殉教者軍団)を創設したことを見出している。敵とは、国外の追放イラク人や国内のクルド人、シーア派コミュニティーのこと。
フェダイン・サダムが1998年に、イラク国外からのアラブ人志願者を受け入れるトレーニングキャンプを開設していることを示唆する書類もある。しかし、その後の外国人志願兵については不明と、先に出た報告書にはある。
新しい報告書は、フセインとアルカイダについてのブッシュ政権の主張に反論する、最初のものというわけではない。
上院情報委員会がまとめた2006年9月の報告によると、フセインは「アルカイダに不信感を抱き、イスラム過激派を自らの政権を脅かすものと見なし、アルカイダが要求してきた武器や作戦上の支援を拒否している」。
レポートは、FBIがイラクの諜報機関の高官Faruq Hijazi に行った事情聴取に言及している。Faruq Hijazi は、ビン・ラディンが1995年にイラクの諜報員とスーダンで行った会談の際に口にした援助要請について、フセインは受け付けなかったと言っている。
Iraqi Perspectives Projectから、先に出された方の報告書はこちら
http://www.jfcom.mil/newslink/storyarchive/2006/ipp.pdf
Institute for Defense Analyses
防衛や科学分野において連邦政府のために研究を行うことを第一としている。連邦政府出資のプロジェクトのみを扱う。ほとんどの仕事は国防総省か国土安全保障省をサポートするもの。
http://en.wikipedia.org/wiki/Institute_for_Defense_Analyses
スポンサーサイト