
18日のアルジャジーラの報道。読みやすいようにまとめた。
バグダッドを訪れる者がすぐに気づくもののひとつに、多数の「for sale」の掲示がある。こいつはいまや首都の建物を覆っている。
ここ3年でシリアやヨルダンに逃げた400万人のイラク難民の多くが、生活費を稼ぐために家を不動産市場に出しているからだ。※
バグダッドの家を売りたいひとの99%が、ここで住むのを怖がっている。中には同僚を殺されたという専門職がいるが、自分もそういう運命をたどるのではないかと怯えている。民族や宗派が理由で民兵に追い出されるのを怖がっているひともいる。ほかにもセキュリティーに関係する理由がたくさんある。
このごろは、みんな出て行く気でいる。商売人でさえイラクでの商売をきりあげて他国に移っているのだ。潜在的購入者がいなくなりつつある。
供給は需要よりはるかに大きい。バグダッドの不動産価格は2003年、2004年に比べて50%近く減っている。
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不動産売却と海外移住の流れがはじまったのは90年代の半ば。そして、ここ3年で急激に増えた。
クウェート侵攻後、国連がバックについた経済制裁で、イラク通貨はその購買力を最大3,000%も下げた。政府から高い給料をもらっていた専門職は、90年代になって慣れ親しんできた生活様式をもはや維持できなくったことを悟った。
しかし、2003年春のフセイン政権崩壊直後は、ものすごい数の国外在住者、亡命者、90年代に国を去ったひとが、大いに儲かる取引や商売、つまり「rebuilding Iraq」(イラク復興)を期待して戻ってきた。戦後の契約受注を期待するたくさんの民間企業を引き連れて。不動産業者は、2004年の終わりまでは不動産市況は「golden renaissance」(黄金の復興)を示していたと言う。
毎日暴力事件が頻発するようになったのは2004年からだ。基本サービスや生活条件が悪化、住民は水や電力の不足が続くと予想した。家では発電機で電気をおこしていたが、そいつもバグダッドに蔓延する燃料不足でしばしば使い物にならなかった。
【バグダッドの退役陸軍司令官の話】-------------
政府に公平であるなら、増派のおかげで、セキュリティーはわずかによくなったといえるが、問題はセキュリティーだけじゃない。自分はバグダッドを離れる覚悟だ。毎日のことについていけない。自分は70で、嫁さんは62だ。十分な水がないし、これ以上は暑さに耐えられない。
家族は検問所とバリケードを経て、いざというときに並んでいる一群(みんな、発電機の燃料を手に入れたいと思っている)が、数ブロック先に逃げることが可能なガソリンスタンドにたどり着くまでについて毎日作戦をたてなければならない。
年金をもらいに毎回命を危険にさらさすなんてもうたくさん。だから家を売って、普通に暮らせる国にいくつもり。
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しかし、幸運にも家が売れ、アラブの首都に移り住めた僅かな人は、ヨルダン、シリア、エジプトで、イラク難民が増えるにしたがって不動産が高騰していることを知る。家を売って手にした数千ドルでは、アンマン、ダマスカス、カイロに住むには十分でないことがわかってきたのだ。
アンマン商工会議所の2006年の報告によると、2005年に1億4730万ヨルダンドル=2億740万米ドル相当の不動産をヨルダン人以外が購入。2004年と比較すると102.8%の上昇だ。また、このヨルダン人以外に含まれるイラク人の数は、67.8%に及ぶ。2004年と比較して10%の上昇だ。
【ヨルダンに移ったイラク人難民の話】-------------
イラク人は呪われているに違いない。バグダッドの家は売ったが、ヨルダンでは何も手に入らない。値段がすごいことになっている。自分たちはここでは働くことが許されていないし、どこの国も難民にビザを発給してくれないから移動することもできない。まるで自分たちをゴミか何かと思ってか。
自分たちができることといったら、破産するまで金を使いきって、人道機関に助けを請いにいくことぐらいだ。
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※UNHCRは、難民200万、国内難民200万のあわせて400万人以上が家を追われており、現在1日2,000人が難民化していると見積もっている。なお、この400万の中には2003年のフセイン政権崩壊前にすでに難民になっていたひとも含まれる。いずれにせよ、1948年のイスラエル建国にともなうパレスチナ人難民以来の人口大移動であり、世界の難民数を大きく押し上げている。
http://www.unhcr.org/news/NEWS/469641494.html
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